Report2.肛門周囲腫瘤切除

今回は未去勢犬に多くみられる「肛門周囲腫瘤」の切除症例について、ご紹介いたします。

1.基本情報(患者情報および状態の所感)

  • 犬種:トイプードル
  • 年齢:11歳
  • 性別:未去勢雄
  • 体重:5.4kg
  • 主訴:肛門周囲にできた腫瘤が大きくなったため切除希望のため来院

2.実例(検査~手術~術後までのプロセス)

検査所見

身体検査
・聴診 144回/分 体温 38℃
・肛門右側11時方向に約3cm大の腫瘤を認めた。
・腫瘤の一部は、自壊し排膿していた。

超音波検査
・腫瘤内は混合エコー性を呈していた。
・左右内側腸骨リンパ節軽度腫大(約5mm)を認めた。
・前立腺の腫大を認めた。

腹部CT検査
・肛門左側に腫瘤を認める。
・辺縁は明瞭で新生血管を多く含む。
・また腫瘍は肛門背側を通りやや左側に伸展している。

細胞診検査
・肛門周囲腺腫を疑う。

以上より肛門周囲腺腫と仮診断し、腫瘤切除及び去勢手術を実施した。

手術所見

以下簡単な手術の流れになります。

  • 肛門周囲腫瘤周囲を切皮。
  • 周囲を鈍性剥離し、底部筋膜を剥離し切除を実施。
  • 左右精巣は、常法通り切除を実施。
  • 常法通り皮膚縫合を実施。

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術後所見

術後の経過も非常に良好であり、術後5日で退院となりました。
退院後は排便障害などは確認できず、経過は良好です。

3.最後に

犬の肛門周囲腺上皮腫は、低グレード悪性腫瘍とされています。
完全切除で予後が良好なことが多い腫瘍ですが、まれにリンパ節に転移する可能性があるとされています。
そのため、経過観察が推奨されます。雄犬では、この腫瘍の発生率を減少する為には去勢手術が有効な手段とされています。

今回の症例においても、軽度にリンパ節が腫脹しているため経過観察を推奨し、現在に至るまで経過は良好です。